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商業地熱の道を拓いた半世紀、100年続く未来への再出発

公開日:2026.10.08

Vol. 237 2026年 8月発行

商業地熱の道を拓いた半世紀、100年続く未来への再出発

東北自然エネルギー株式会社 松川地熱発電所

東北および新潟県の各地において、自然由来のエネルギーを活かした発電事業を展開する東北自然エネルギー株式会社。同社は現在、水力と地熱を合わせて23カ所、総出力約28万kWにも及ぶ発電設備を保有・運営しています。

その中のひとつである松川地熱発電所は岩手県盛岡市の北西、八幡平市に位置します。八幡平市は、豊かな自然の恵みにより独自の産業や文化が育まれてきた地域です。冷涼な気候と土壌に適したリンドウは日本一の生産量を誇り、お盆の時期には全国への出荷が最盛期を迎えます。また、松川地域特有の蒸気の特性を活かした「地熱蒸気染め」は、ここでしか見られない染色技法であり、地球のエネルギーが織りなす見事なグラデーションを生み出します。

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地熱蒸気染め

 

数々の功績を残す、地熱発電のパイオニア

そんな自然の恵みの中心にある松川地熱発電所は、日本のエネルギー史において数々の偉大な功績を残してきました。同発電所はアジア初、世界でも4番目の商業用地熱発電所として、1966年に運転を開始しました。この歴史的な出来事にちなみ、運転開始日の10月8日は「地熱発電の日」と制定されています。

また、日本の地熱発電の多くは熱水と蒸気が混ざって噴き出しますが、松川地熱発電所は水分を一切含まない、完全に乾いた蒸気(過熱蒸気)だけがダイレクトに噴き出す「蒸気卓越型(ドライスチーム)」であるという点でも日本で唯一です。熱水を分離するプロセスを必要とせず、純度100%の天然蒸気でダイレクトにタービンを回す、地球のパワーをストレートに受け取る仕組みです。

この希少な過熱蒸気は硫化水素の濃度が高く、機械にとっては極めて過酷な条件であるにもかかわらず、半世紀にわたって安定して発電を続けてきた実績が認められ、2016年には「機械遺産」に認定されました。さらに2026年2月には、世界的な電気・電子工学会であるIEEEより、社会や産業の発展に多大な貢献をした歴史的業績を称える「IEEEマイルストーン」に認定されるという世界的快挙も成し遂げています。

こうした確かな実績から、他社の地熱関係者からも「松川さんで大丈夫なら、うちでも大丈夫」と言われるほど、日本の地熱発電における指標としても存在しています。

新たな門出に欠かせないポンプ

松川地熱発電所は2022年より大規模な更新工事を開始し、2025年12月に運転を再開したばかりの節目にあります。新しく生まれ変わったタービンと発電機は、八幡平市の花であるリンドウ色に彩られ輝きを放っています。

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こだわりの「リンドウ色」で彩られた発電機とタービン

この更新工事では復水器や冷却塔も一新され、そこに付随する循環水ポンプ、冷却水ポンプとして採用されたのがトリシマのポンプです。タービンを回し終えた蒸気は復水器で冷やされ温水となります。その温水を冷却塔へ送り出すのが循環水ポンプ。蒸気を冷やすために冷却塔で冷やされた水を復水器に送るのが冷却水ポンプです。この2つのポンプが停止すると発電も停止してしまうほど重要な役割を担っています。

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循環水ポンプ(左) 冷却水ポンプ(右)

 

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今回の取材は本社・地熱事業部の伊藤様、雫石事業所の髙橋様、北田様にご対応いただきました。主にお話をしてくださった髙橋様と北田様は、地下を担当する貯留層部門と密に情報共有を行い、地上の機械設備の運転調整から保守メンテナンスまでの幅広い業務を最前線で支えておられます。

トリシマポンプの印象をうかがったところ、「以前のポンプに比べ、バレルの長さが短くコンパクトになった。部品点数が減ることはメンテナンス面で大きな進化」と、構造面での変化を実感されていました。さらに「何より驚いたのは、運転音が劇的に静かになったこと。これまでは起動時の水撃に気をつかうこともあったが、トリシマのポンプは非常に滑らかに立ち上がる」とのお言葉をいただきました。

未来に向けた堅実なあゆみ

髙橋様は今後の展望について「松川地熱発電所は今年で60周年。次はやはり100年を目指したい」と語ってくださいました。近年、エネルギー業界では次世代の地熱発電方式などが注目されていますが、松川地熱発電所が目指しているのは、「100年を見据えた堅実なあゆみ」です。地球の恵みである蒸気を長く大切に使い続けるため、出力を無理に上げず、これまでの確かな実績に基づいた持続可能な運営体制を徹底されていることに感銘を受けました。

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その堅実なあゆみを実現するために求められるのが、地熱水特有の強い腐食性にも耐え抜く堅牢なポンプです。ポンプの耐久性によりプラントの停止期間を最小限に抑えることが期待されています。

この期待の背景にはただ「電気を創る」だけではない、松川地熱発電所が大切に紡いできた地域社会との「あたたかい循環」の歴史があります。同発電所は60年前の運転開始から、発電後の温水を温泉街や温水ハウスなどに送り、地域全体を温め続けてきました。この循環を止めないためにも、私たちトリシマもその期待に堅実に応えていきたいと思います。

末筆ながら、快く取材にご協力くださいました東北自然エネルギー株式会社の伊藤様、髙橋様、北田様をはじめ関係者の皆様に、誌面をお借りして厚く御礼申し上げます。

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