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ジャパン・レジリエンス・アワード 最優秀賞受賞の舞台裏
激甚化する水害からかけがえのない日常を守り抜く
誇りと使命―私たちが選ばれた理由
国土強靱化の旗手として この国を、もっとしなやかに、強く。
最近よく耳にする「レジリエンス」という言葉。直訳すれば「回復力」や「弾力」ですが、防災の世界では「大きな災害に見舞われても、しなやかに立ち直れる強さ」を意味します。この「災害に強い国・地域づくり」への貢献を讃えるのが、ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)です。
2026年4月21日。第12回目を迎えた同アワードにおいて、トリシマの「耐水モータ一体型ポンプ」が企業・産業部門における最高位の「最優秀賞」を受賞しました。
地球温暖化に伴い激甚化する水害。この避けられない自然の脅威に対し、ポンプのプロとして何ができるのか―。「ポンプの力で、暮らしと命と未来をつなぎ、サステナブルな社会を実現する」という私たちのパーパスを具現化した一つの答えが、今回、最高の形で認められました。
私たちトリシマが、製品開発に込めた想いや現場で証明された真価に迫ります。

技術の神髄―常識を塗り替えた「耐水」
レジリエンスを支える4つの核心技術
従来のポンプ場では、モータなどの電気設備は浸水を避けるために上階に設置されていました。しかし、激甚化する豪雨によってその高さまで水が及び、運転不能になる事例が増えています。そこでトリシマは、ポンプとモータを完全に一体化した「水密構造」を実現。これにより、万一ポンプ場が浸水しても止まることなく稼働し、街の排水機能を守り続けます。
① 完全防水構造
耐水モータとポンプが一体化し、外部から水が侵入しない水密構造を採用。ポンプ場が浸水しても運転を継続します。
② 冷却水が不要
耐水モータは空冷ファンによる冷却機能を備えているため、冷却水を必要としません。
③ 建屋レス(屋外設置)が可能
雨ざらしの屋外にも直接設置可能。浸水しても運転が可能なため、建屋を建設する必要がなく、建設コストを大幅に削減できます。
④ 優れた耐震性
モータとポンプが一体となった構造であるため、地震の揺れに対しても高い性能を発揮します。

「想定外」が日常になる時代に
地球温暖化の影響で、1時間雨量50mmを超える猛烈な雨の回数は、40年前の約1.5倍に増えています。もしも、私たちの街で大規模な氾濫が起き、多くのポンプ場が水没して排水機能が止まってしまったら......。水が引くまでに2週間以上を要し、都市機能は完全にマヒしてしまいます。
この絶望的なシナリオを回避するために、トリシマは「排水機場が浸水しても稼働し続けるポンプ」を追求してきました。今回の最優秀賞は、この技術が社会を守る「不可欠なソリューション」であると高く評価されたものです。
累計70台の導入実績:国内外のレジリエンス向上に貢献
トリシマの耐水モータ一体型ポンプは、2009年の初納入以来、累計70台の導入実績を誇り、多角的に社会へ貢献しています。たとえば、国交省の「WOW TO JAPANプロジェクト」では、50℃を超すパキスタンの酷暑に挑み、その圧倒的なタフネスを世界に証明しました。一方で、国内では「産学官連携プロジェクト」を通じ、備前焼の意匠を凝らしたユニークなポンプを提供。機械を「隠すべきもの」から「街の誇り」へと変え、防災をより身近なものへと昇華させています。
不屈の現場―最前線で紡がれる物語
5度の浸水を乗り越えて、守り抜いた「黄金の収穫」 ― 宮城県・後谷地排水機場の記録
宮城県大郷町、一級河川・吉田川のほとりに広がる豊かな田園地帯。
この風景を守る「要」である後谷地排水機場は、激甚化する豪雨という抗いがたい脅威に晒されていました。
トリシマは、これまでの対策が限界を迎える中、「守るべき実り」のために新たな技術でこの困難な課題に立ち向かいました。
繰り返された水害、5度目で突きつけられた限界
1982年の建設以来、後谷地排水機場の歴史は、まさに水害との戦いでした。
2019年の台風19号までに受けた浸水被害は、実に通算5回。そのたびに電気設備の嵩上げなど懸命な対策を重ねてきましたが、5度目となったこの台風では過去最悪の3.3mという浸水を記録。
既存のポンプ形式では機器の設置高さが物理的な限界に達しており、従来の延長線上ではこれ以上の防御は不可能な状況にありました。

水に浸かっても動き続けるという選択
そこで導き出された答えが、これまでの「嵩上げ」という発想を捨て、万一の浸水時でも運転を継続できる「耐水モータ一体型ポンプ」への刷新でした。
豪雨の中で真価を発揮した、「止まらない」ポンプ
この新技術が真価を発揮したのは、導入翌年の2022年7月。宮城県を中心に激しい降雨が発生し、機場の北東10km地点では24時間で248mmという猛烈な雨を記録しました。機場内は再び2.4mまで浸水しましたが、耐水モータ一体型ポンプは濁流の中でも止まることなく排水を継続。稲の生存限界を前に速やかな排水を完遂し、その年の実りを見事に守り抜いたのです。

プロジェクトを支えた人々の想い
絶対に、「災害に強いポンプ」をつくる。
ちょうどこのポンプを開発していたときのことです。たまたま私の故郷を豪雨が襲い、親戚や知人が被災しました。 自然の猛威を前に、「自分たちにできることは何だろう」と改めて考えたとき、頭ではなく実感として、絶対に「災害に強いポンプ」が必要だと思ったんです。ポンプの力で災害そのものを減らすことはできません。でも、日常を取り戻すまでの時間を少しでも縮めることや、二次災害を防ぐことならできる。その強い想いでつくったポンプです。

もう、復旧に立ち尽くす姿は見たくない。
長年、後谷地排水機場を見守る中で、繰り返される浸水被害の過酷さを痛感してきました。2019年には激甚災害に指定され、迅速な復旧が急務となりましたが、公共事業の「原形復旧」という原則の壁は極めて高かったです。
それでも農家の方々の想いを受け、宮城県の皆様と共に奔走し、納入に至りました。以降、再び豪雨に襲われたときも、被害はありませんでした。地域の方々の苦労を解消できた。営業としてこれほど嬉しいことはありません。

レジリエンスを体現するポンプを、広く伝えたい。
耐水モータ一体型ポンプは、国土強靭化に資する、まさにレジリエンスを体現した技術です。お客様からは高い期待を寄せられている一方で、公共事業における「特定技術への依存」は公平性の欠如とみなされる側面もあり、採用の障壁となることもあります。そんな中でも、耐水モータ一体型ポンプの価値をより広く社会へ還元したいという想いから応募に至りました。今回の受賞を心から嬉しく思います。
