世界各地でロックダウンが恒常化して、すでに1年以上が経過。コロナを経験して、人類や地球環境は、考えているよりはるかに簡単に脅されてしまうものだと気づかされました。そして世の中はこの反省にたって、持続可能な地球環境と新たな経済成長を同時に実現するために一斉に動き始めました。2050年カーボンニュートラルを伴うグリーン成長戦略です。2020年10月には、日本政府もついに「2050年カーボンニュートラル」を宣言。業種や規模を問わず、各企業がそれぞれに自社にできることを考え抜き、具体策を打ち出してきています。
トリシマは、いつの時代も社会生活に必要不可欠なポンプを世の中に提供してきましたが、創業100年を超え、さらにギアを上げていきます。カーボンニュートラル社会への貢献と事業の成長を両立させる長期ビジョンのもと、「社会に欠かせない企業」というトリシマの「ありたい姿」を明確にして2050年をめざします。
トリシマは2050年の一歩手前、2049年で創業130周年を迎えます。そこから逆算して、まずは創業110周年を迎える2029年までを大きな区切りとして具体的な目標をかかげました。それが「新・中期経営計画 Beyond 110」です。大きな柱としては2つ。すでに我々の強みである既存技術をさらに強化させ、ダントツ化を図ること。こちらは今すぐにできる短期ベースでの社会貢献企業。もう一つは、新しい技術開発の推進。中・長期ベースでの社会貢献をめざす事業です。
短期ベースの社会貢献事業の一つ目は、これまでも取り組んできたポンプによる省エネ化「ポンプde工コ」です。2009年度からの地道な活動が認められ2014年度には省エネ大賞を受賞しました。「脱炭素」がキーワードとなった今、今後はさらなる技術革新で省エネ化を極め、「スーパーエコポンプ」として世の中により広く普及させていくことで、消費電力とCO₂排出の削減に大きく貢献していきます。
二つ目として、同じように2009年度頃から市場への提案を始めた気候変動対策向けのポンプ。こちらも堅実に受注を積み重ねています。背景には、近年頻発する水害もありますが、今後はポンプ場の老朽化を受けての更新受注も増えてくるでしょう。というのも、日本の社会インフラは高度成長期に集中して整備されており、今後20年で建設後40年以上経過する施設の割合が高まってきています。ポンプ場も例外ではありません。老朽化対策と気候変動対策の大きな社会のニーズに最新鋭の技術でしっかり応えていくことで、安心・安全なインフラ構築に貢献していきます。
三つ目は、以前からお伝えしている回転器機の簡易モニタリングシステムTR-COM。2018年度の本格リリース以来、確実に受注を重ねてきました。他社が真似のできない「故障予知」への期待に大手電力会社や鉄鋼会社など多くの優良企業に導入いただきデータの蓄積も進んでいます。コロナにより現場に行けなくなったり熟練者が若手に技術を伝承しにくくなったりしている今、データに基づくスマートメンテナンスでDXを推進し、お客様のポンプ設備の保守点検業務をより効率的に快適にしてあげたい。今後さらにどう進化させていくか、私自身もスタッフもワクワクしながら取り組んでいるところです。
最後に、次世代エネルギーの一つとして大きな可能性が期待されているアンモニア発電。すでに国内外で数々のプロジェクトが進んでおり、トリシマにもポンプの引き合いがきています。アンモニアを扱うポンプには高度な技術が求められますが、それに応えられる一社としてさらなる高機能化を追求し、今後の市場拡大に備えていきます。
これら四つの短期ベースの社会貢献事業は、すでに開始している事業であり、これから継続的に強化、進化させていきます。
もう一つの柱、中・長期ベースでの社会貢献事業の一つ目が、カーボンニュートラルの実現に向け今注目の水素。地球上に無尽蔵に存在し、さまざまな資源から生産可能。エネルギー効率もよく、CO₂排出ゼロ。まさに「夢の燃料」として期待が高まる所以ですが、気体のままでは運搬、貯蔵がしにくく液化の必要があります。ここにポンプの需要、つまりトリシマの活躍が見込めます。液化にはマイナス259度と扱いが難しく、越えなければならないハードルは多々ありますが大きなポテンシャルを感じており、これから全力で研究開発に取り組んでいきます。
二つ目の挑戦は、風力事業。日本政府は洋上風力の導入量目標を2050年に90GWと打ち出しました。これに陸上風力もあわせると合計130GWと非常に大きな市場拡大が見込めます。トリシマはこれまでも、風力発電設備のメンテナンス事業を手がけるイオスエンジニアリング&サービス株式会社(49%持分適用会社)を通じて、風力事業には関わってきましたが、今後はさらに再注力。イオスエンジニアリング&サービスのジョイント・ベンチャー先であり、業界最大手の一社である日本風力開発株式会社との人的、資金的アライアンスを通して事業の拡大をめざします。トリシマの回転器機メーカーとしてのメンテナンス技術と経験を、風力事業のスペシャリストであるこの二社と掛け合わせ、最大限にシナジー効果を高めることで今後の市場拡大に備えていきます。
この二つの中・長期ベースの社会貢献事業は、2024年までに確固たる基盤をつくり、2025年度からの実用化と、2030年度以降の本格的事業拡大をめざすものです。
以上にかかげた短期及び中・長期の具体的な取組みを中心に踏まえて、新・中期経営計画Beyond110の数値目標は下の通りです。
また、会社にとって重要なステークホルダーのひとつである株主の皆様への還元もよりいっそう重視したいと考えており、これまでは業績に関わらず安定配当を基本方針に配当性向30%を目安としていましたが、今後は安定配当は維持しつつも、より確実な収益体制を構築していくことで、自己株式取得を含む総還元性向40%以上をめざしていきます。
さまざまな取組みを進めていくのは、やはり「人」です。この計画を実現して世の中にさらに貢献できるかどうかは、すべて私たち次第。全員の能力や活力を最大化できれば、「社会に欠かせない企業」になる「夢」は必ず実現できると信じています。一人ひとりの成長こそが、トリシマの未来の土台です。
その新しい舞台として、2021年3月、新本社工場ビルが完成。「一体感」をコンセプトに、モノづくりの現場と営業、技術、生産、事務部門がひとつながりとなる空間をつくりました。ここで今回掲げた中期経営計画を一人ひとりの目標と行動にしっかりとシンクロさせ、高速でPDCAを回すことで実現性を高めていきます。そして、必ずトリシマならではのEVOLUTIONを生み出し、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に貢献、「社会に欠かせない企業」をめざしていきます。
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