お客様の声 エコポンプニュース Vol.70エコポンプの増設でリスク低減と省エネを実現
~東京製鐵株式会社 宇都宮工場での事例~
省エネ鉄鋼メカニカルシール

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※2017年10月時点の原稿です

国内最大手、世界でもトップレベルの技術を誇る電気炉鉄鋼メーカ、東京製鐵株式会社(以下、東京製鐵)の省エネへの取り組みを紹介します。電気炉鉄鋼メーカっていったい何だろう?と思われる方もいるかもしれません。高炉メーカが鉄鉱石や石炭を主原料として鉄鋼を生産するのに対し、電気炉メーカはリサイクル資源である鉄スクラップを主原料として鉄鋼を生産します。この事業自体がまさに「省エネ」を体現している東京製鐵は、建物などの構造材として使われるH形鋼で国内トップシェアを占めています。そして、通常の電気炉鉄鋼メーカの製品だけではなく、高炉メーカが得意とする分野へも展開しています。

▲東京製鐵株式会社 宇都宮工場

ところで、鉄は私たちの生活に無くてはならない資源である一方、鉄製品を生産するには原料を燃やすため多大な電気を必要とし、結果多くのCO2を排出してしまいます。また、日本では鉄の蓄積量が13億トンを超えたと言われており、鉄スクラップとして発生する量も年間4,000万トンを超えています。東京製鐵は、この鉄スクラップという貴重な資源のリサイクルを促進し、大量のCO2発生に繋がる鉄鉱石や石炭の輸入を減らし、社会全体のCO2排出削減に大いに貢献しています。2006年度分以降、各年度の実績として、政府が毎年発表している企業別のCO2排出量の集計によると、東京製鐵の電炉法による鉄1トン生産当たりのCO2排出量は、高炉法による生産の場合と比較して、なんと4分の1。75%もCO2低減を実現しているとは驚きです。

▲H形鋼

エコポンプ導入の経緯

「経営の柱として省エネに注力してきたのですが、直近はその傾向がさらに強くなり投資回収年の基準を年々緩和し2倍以上になったんです」

という生産部長代理の佐藤さんと生産部圧延課長の松原さん。ただ、10年ほど前から生産効率を上げる活動を始め、大きな設備の見直しなどは既に実施しており

「省エネはやりつくした」

と感じていたそうです。そんななか、

「たまたまトリシマの営業が来てくれてポンプで省エネできる余地があることに気づけたんです。ポンプ自体の性能が落ちているようだけど、うちで使っているポンプは変動が激しいからインペラカットはできそうにないし、基礎から工事しないといけなくて大掛かりになる」

と感じていたそうです。それでも

「保熱炉送水ポンプの予備機が必要だったこともあり、一台増設することにしました」

と、社内で省エネの機運が盛り上がるなか、エコポンプの導入は良い機会と捉えていただけました。

▲エコポンプ(保熱炉送水ポンプ)

保熱炉送水ポンプとは、圧延プロセスにおいて約1,300度にも達する保熱炉(加熱炉とも呼ばれる)を冷却するための水を送る非常に重要なポンプです。この保熱炉は、ポンプによる冷却水の供給が止まってしまうと炉が溶けてしまう事態に陥るため、既設ポンプの取替えには慎重を期する必要がありました。そこで、今回は、既設ポンプの横にエコポンプを増設することで予備機を確保。さらに高効率なエコポンプを常用として運転していただけることになりました。

保熱炉送水ポンプは、保熱炉が稼働している間は常に運転し、さらには炉が稼働する前日から炉が止まった次の日まで運転することもあり、圧延プロセスの中で最も稼働時間が長いポンプです。そのため省エネ効果に期待できるという点もエコポンプを導入する決め手となりました。松原さんが、トリシマの省エネ報告書を片手にポンプ導入ビフォーアフターで

「消費電力を10%削減できるのは大きいよね」

と省エネ効果に笑顔で太鼓判を押してくださいました。

「実際に効果が目に見えて実感できているかというと、ポンプ一台ではわからないのが正直なところだけれど、トリシマの営業がポンプ導入前と後に実際に来てくれて、ポンプを測って省エネ提案書・報告書の形で提示してくれるのでわかりやすい

と、トリシマの営業が熱心に何度も通ったことも評価していただきました。

念願のメカニカルシール導入

「(不純物が混ざらない)循環水を送るポンプには、水が漏れないことで省エネにもなって、グランドパッキンの調整もいらないメカニカルシールを前々から使いたかったけれど、グランドパッキン仕様の既設ポンプをメカニカルシール仕様に改造しようとすると費用の面などでできない」

という思いがありました。今回、メカニカルシールが標準装備のエコポンプにすることで、とても喜んでいただけました。エコポンプはスラリーがある場合はダブルメカニカルシールやグランドパッキンを推奨しています。清水などのスラリーがない場合は、(シングル)メカニカルシールを推奨しています。

さらなる「ポンプdeエコ」に向けて

エコポンプを導入してみて結果が出たからこそ

「次のポンプはもう決まっているからよろしく」

と。これから導入を検討するには

「どういったところで省エネできるか、具体的にどのポンプで省エネできるかは現場からの声があってこそ」

という訳で、近々、東京製鐵の機械を扱う技術職員向けに私たちポンプのプロによる「ポンプde省エネ講習会」を設ける予定です。技術職員は鉄1トン作るのにどれくらいエネルギーを使ったかというエネルギー原単位を意識しているそうです。ポンプの知識を身につけ、省エネのひとつとしてポンプの効果を考え、省エネに結びつけてほしいとのことでした。

「まだまだ省エネできるところはある」

とのことなので、私たちトリシマがこれからも省エネに積極的な東京製鐵のポンプでの省エネ「ポンプdeエコ」を全力でサポートします。

▲「省エネはコツコツと積み上げていくもの、省エネは投資しないとできない」といきいきと取材に応えてくださった松原課長(右から二番目)と圧延課の皆様

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