平成23年度下期社長方針

社内報「とりしま」より転載しています。
一部、内部的なコメントも含まれていることをご了承ください

「とりしま」第178号/2011.11.11記

トリシマの新しい体制 ~さらなる充実を目指して~

9月2日に野田内閣が発足しました。2009年9月の総選挙で、民主党が単独政党としては
日本の選挙史上最多となる約3千万票を獲得し、政権交代を果たしてからちょうど2年。民主党3人目の内閣総理大臣です。
またバブル景気崩壊から今年でちょうど20年。その間、1991年当時の自民党の宮沢内閣から数え、
今回の野田内閣まで通算14人の総理大臣が政権を担当してきました。
唯一長期間、政権を担った小泉首相の5年間を除くと、15年間で13人という頻度になります。
次々と新しい総理大臣に代えて、或いは政権政党を自民党から民主党に代えて、ジリ貧の日本を救ってくれる、
日本を立て直してくれる内閣を探してきましたが、その想いは叶わず、
結果として、相変わらず総理大臣の在職期間が一年という異常事態が続いています。

日本再生に必要な考え方とは

この20年間、名目国内総生産(GDP)が500兆円前後で停滞を続ける中、
国債発行残高は、1991年の172兆円から2011年では700兆円を上回る水準に増加。
成長もしないのに借金だけが増え続け、日本はまるで坂道を転がり落ち続けているかのようです。
企業に例えると、20年間で生産高は増えないのに、借入れだけ4倍に膨れ上がってしまった・・・という異常な状態。
毎年のように交代してきた総理大臣がサボっていた訳ではないでしょう。(最近一部、資質に欠けていたと言わざるをえない人もいましたが)様々な政策を打ち出し、改革を試みてきたはずですが、結果は全く満足できるものではありません。
なぜ、みんな総崩れとなり、こんなにも上手くいかないのでしょうか?

今年2011年、東北大震災、原子力事故が起きました。『団塊の世代』という言葉の産みの親でもあり、
戦後の日本社 会を常に斬新な眼で分析してきた堺屋太一氏は、
『第一の敗戦が幕末、第二の敗戦が太平洋戦争、そして下り坂20年の末にきた大震災が第三の敗戦であり、
ここで大改革ができなければ、なお日本は負け続ける』
と述べ、日本の今を、『第三の敗戦』と位置づけました。(*1)
『経済は成長しない、デフレは進行する、人口が増加から減少へ、そして高齢化社会が進行する。
規格大量生産の時代が終わり、世の中の構造が変わりつつあるのにかかわらず、官僚主導の従来のシステムを変えなかったことが、この20年間の日本の衰退の原因。本当の経済の基本と社会の本質を変えるには、担当する人を入れ替えたり(政権交代)、
予算の組替や執行を改めたり(政策転換)するだけでは絶対にできない。
その基にある仕組み=体制(システム)を変えなければならない。』と喝破しています。

その上で、橋下・前大阪府知事の“大阪都構想“を『明治以来の日本の仕組を変える最初の具体的提案。
そして、それをまず大阪から始めようというもの。大阪都構想が職員基本条例とセットというのは、
まず版籍奉還(=公務員改革)と廃藩置県(=大阪府と大阪市を統合して都とする)を行うこと。
これに、国が行うTPPとがうまく合わされば、新しい形の維新、まさに大阪維新、日本の21世紀維新が実現すのではないでしょうか。』(*2)と、強力にバックアップしています。

津波の被害を受けた東北の沿岸部の状況は、第二次世界大戦後の焼け野原の写真とまさに同じ。何もない所からの復興です。
敢えて不謹慎を覚悟して言うと、震災の大きな被害を被った今は、真っ白なキャンバスに新たな町やシステムを作ることのできる
“チャンス”でもあるのです。日本のあらゆる面で、この“仕組=体制(システム)”自体を変えるという発想が、いま求められています。

企業を取り巻く環境とトリシマの“体制”

経済面では、円がついに対ドルで75円まで高騰。この4年間で50円を超える円高で、毎年10円ずつ切り上がっている計算です。1971年のニクソンショック前の360円の水準から見ると、ドルはこの40年間で五分の一にまで下落したことになります。
この傾向、“もう”終わるのか、それとも“まだまだ”続くのでしょうか。
この20年間坂道を転がり落ちている日本のことを考えると、前者の“もう”という感じがしますが、
経済の悪さ加減をアメリカや欧州と相対的に比較すると、後者の“まだまだ”と考えるべきなのかもしれません。

GDP比の比率が大きいとは言え、自国の借金を、自国民の財産で支えている日本と、自国外へ依存している欧米諸国とでは安定度に差があり、いまだに海外の資金が日本円に集まってきています。この要因は“実質金利”(=名目金利‐インフレ率)という指標に現れており、先進国で実質金利がプラスの国は日本だけ。そう、日本円が一番安全(?)で実質利回りが高い、
これが今の円高の大きな背景でもあるのです。

このように、相対的な比較から見ると“まだまだ”円高局面は続くと覚悟しなければならないのでしょう。
行き過ぎた円高は、先進国の企業との競争上、大きなハンディキャップであり、加えて韓国や中国などの新興国からのチャレンジにも晒され続けます。この環境下でも成長する“体制”を整備することが、今まで以上に重要となってきています。
日本企業が置かれているこの厳しい経営環境下でも、バランスのとれた“体制”を更に充実することによって、
トリシマは活路を切り開いていきます。その際に重要となるキーワードは、“事業領域”と“地域”の両面でのバランスです。

2003年からTGT(トリシマ・グローバル・チーム)活動を本格化して以来、成長する過程でこのバランスを常に意識してきました。
事業領域のバランスとは、どのような経済環境でも安定した事業を展開するための
“ハイテク・プロジェクト・サービス・新エネ/環境”のバランスです。
例えば、好景気時には民間資金がIPPやIWPPに流入し、“ハイテク”が伸びる。逆に現状のような景気停滞期は、景気を浮揚する目的からも公共投資事業が期待され、“プロジェクト”が伸びる。或いは“サービス”で安定した需要を創造する。
そして日本のように電力不足になれば、新エネ需要を取り込む……というイメージです。

“地域”のバランスとは、日本に加えて世界をアジア、中東、ヨーロッパ、アメリカの五つの地区に分け、バランスをとる考え方です。
通貨変動リスクのヘッジだけでなく、世界各地域間の景気循環や経済発展のラグ(時間のずれ)に対しても非常に有効です。
まだまだ十分に均整のとれた体制には、ほど遠いものの、皆さんの努力のお陰で、トリシマのこれらのバランスは少しずつ様になってきました(図1)。 11月10日、トリシマ・グループの2011年度上期の決算と今期の通期見通しを公表しました(表1)。

大幅な円高や株式市場の下落もあり、上期見通しの下方修正を余儀なくされたものの、最終的には大きく落ち込んだ製作所単体の数字の大部分を、グループ会社がカバーしています。
特に上期は、製作所単体とグループ会社が上げた営業利益が6億円と同額となり、全体の半分をグループ会社が稼いだこととなります。このように、バランスがとれ始めた“新しい体制“が、今回の円高局面や需要低下局面で、トリシマの決算を支えるという大きな効果を出しつつあり、今期の連結営業利益の通気見通しを若干ではありますが、期初の予想より上方修正しています。
会社の数も増える中、皆さんには日常、なかなか関わりのない会社も多いかもしれません。今日は是非、名前と機能を頭に入れ、
自分の業務との関わりを考える機会として下さい。

今期加わった新しいグループ会社の紹介

トリシマ・ヨーロッパ・プロジェクト(TEP)

熱や蒸気の省エネ技術を基に工場や下水道処理場のプラントのエンジニアリングを行う、
五月にイギリスに設立した会社。今後、アジア、中東のプロジェクト部隊との技術や人材の交流も検討していきます。

トリシマ・サービス・カナダ(TSC)

8月に設立したトリシマの北米における最初の子会社。カナダのカルガリーをベースに、
トリシマの課題でもあるOil&Gas市場に向け、ポンプや関連機器のマーケティング及びサービスの提供を行う会社です。

その他、まだ会社組織にはなっていないものの、中東のプロジェクト部隊をまとめ、見積・設計・調達・施工業務を一貫して行う組織、トリシマ・ミドルイースト・プロジェクト(TMEP)を近々立ち上げる予定です。
そして、地域ポートフォリオとしては、引き続きアメリカ大陸での機能の充実が喫緊の課題となります。

あるべき『体制』を目指して進化する

皆さんがこの社内報を読む頃には、大阪の市長と府知事の選挙も終わっている頃でしょう。現時点でもちろん結果は分かりませんが、いずれは大阪の“体制”を変えていかなければならない事は確かでしょう。
大阪市の人口は、京都府全体とほぼ同じ260万人。その京都府には26の市町村があり、選挙で選ばれた市町村長が責任を持って住民サービスを行っているのに対し、大阪は一人の市長が260万人のサービスを担当しているのをみると、大阪市は、身近の住民サービスには一つの市としては大き過ぎる。

一方、都市としてはロンドン市が750万人、トリシマの工場がある中国天津市が720万人と、大阪市単独では小さいものの、大阪府880万人であれば十分対抗できる規模となる。
大阪都となれば、上下水道事業や河川管理など重複する事業を排除し、スリム化できます。アジアの主要都市として伸びるポテンシャルは大 きいものの、そうなる為には、大阪が他の都市との競争を勝ち抜き、その恩恵で住民が豊かになる“体制”に変わることが、最初の一歩なのでしょう。

トリシマ も同じです。省エネ技術を極め、世界ベースで社会に貢献していく為には、為替変動に左右されない“体制”、新興国とのコスト競争に負けない、或いはコスト競争に巻き込まれない“体制”を目指して常に変化を続け、競争に勝ち抜いていけるかがキーなのです。

最後に、心に響いた橋下前府知事の言葉を引用します。

『今までの政治は、リンゴを育てる農園を耕すことに力をいれず、 リンゴを渡す話ばかりをしてきました。だからリンゴはいずれ渡すけれども、今必要なのは農園の土をしっかり耕すこと、リンゴがなる仕組、システムをしっかり 作り直すことがたいせつですということを、市民の皆さんにどれだけわかってもらえるかが勝負です。土を耕す仕事は地味でしんどい。
しかし、大阪の土を今、ここで耕さなければ、大阪だけでなく、 日本で、もうリンゴは二度とできなくなります。』(*2)

いつも皆さんに話している『失敗とはチャレンジしないこと』ということを思い出して下さい。
日常業務だけに埋没することなく、それぞれ皆さんの周りで打破すべき古い“体制”を、『正確に、はっきりと、そして必ず』で、
変えていく活動を意識しようではないですか。

(平成23 年11月11日 社内報「とりしま」No.178 2011秋号)
(*1)『第三の敗戦』堺屋太一・著
(*2)『体制維新 -大阪都』 橋下徹/堺屋太一・著

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