エコポンプニュース エコポンプニュース Vol.84周波数の変化によって回転機械の異常を早期に発見
~TR-COM特集号~
お知らせIot(TR-COM)

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※2020年12月現在の原稿です

TR-COMの概要

TR-COMとは、トリシマがポンプ専業メーカーとして培った技術を元に開発した、回転機械簡易モニタリングシステムです。ポンプをはじめとした機器にIoTセンサを取付けて振動と温度を管理することで、異常やトラブルの兆候を早期に発見し、突然の停止を未然に防止します。人手不足や手間削減といったニーズにもお応えする本システムを、今回はご紹介します。IoTによる機器管理を簡単に導入してみたい…そんな方にもおすすめです。センサは電池交換式で無線となっているため、電気配線工事なしで導入することができます。またIoTセンサは回転機器から振動と温度のデータを計測し蓄積。専用のモバイルアプリからBluetoothを介すことでデータを収集します。アプリ内のボタンをタップ操作するだけですので、どなたでも簡単に、短時間での利用が可能です。センサから20~30m離れた位置でもデータを取得できるので、設置場所に関わらず、安全な位置から操作できます。取得したデータはアプリ上ではもちろん、クラウドを経由し、Web画面からより詳細なトレンドグラフやFFT周波数グラフを確認できます。

TR-COMの特徴と事例

一般的に利用されているポータブル振動計や、無線型振動センサの計測範囲は、1,000Hzまでです。その範囲で機械の振動を測定しても、機械の故障は検出できますが、故障前の劣化の予兆を検出することは難しいです。TR-COMでは、10,000Hzまでの振動を捉えることで、早期に劣化の兆候を検出できます。

さらにTR-COMの特徴は、「周波数スペクトルを時系列に並べて、周波数の変化を捉える」という点です。一般的な振動監視手法では、振動のレベルが大きくなり、振動トレンドグラフが上昇してこないと、機械の劣化を検出できません。トリシマ独自の監視手法では、いつの時期から、どの周波数帯で振動が上昇しているのか可視化し、簡単に機械の変化を発見することができます。

活用事例

例として、コンプレッサに取付けたTR-COMの活用事例をご紹介します。FFT周波数グラフ(図1-1)から、2020年4月~5月にかけて10,000Hz付近の高周波数の振動値が高くなる変化を検出しました。このような周波数の変化にはいくつか原因が考えられますが、軸受とハウジングが擦れ合うと高周波領域にこのような兆候が現れる場合があるため、軸受外輪が擦れている(外輪クリープ)と推測しました。

その後、メンテナンスを実施すると推測したとおり、軸受B(図1-2)の外輪はめ合い面が鏡面になっており、想定通りクリープが生じた形跡がありました。メンテナンスでベアリング交換してしっかり固定すると、振動値が下がり安定しました。

もう1つ事例を紹介します。こちらの循環水ブロワのトレンドグラフ(図2-1)をみると、2019年4月から6月にかけて、振動加速度が右上がりに上昇しています。これをFFT周波数グラフ(図2-2)からみると、6,000Hz近辺の高周波帯域が2019/5/12を境に卓越していることが見てとれます。軸受異常によって振動上昇を起こしていると推定し、軸受のグリスアップを実施したところ、振動値が大きく低下し、回転機械の停止トラブルを未然に防ぐことができました。

TR-COMを使用されているお客様からは、

「振動を見える化できるところが良いです」

「軸受のグリスアップおよび交換のタイミングが分かりやすい」

といった好評の声をいただいています。またFFT周波数グラフを用いて、

「この周波数帯の形が変わって、このぐらい大きくなったら軸受交換する」

と社内メンテナンス基準を作成して運用されている方もいらっしゃいます。

まとめ

このように回転機械の劣化を早めに検知するTR-COMですが、振動の原因が不明、異常を発見しても対処方法が分からない、といったアフターサービス・お問合せには、トリシマの振動診断のプロが原因解明にむけアドバイスいたします。現在発電所や、製造工場、ビルなど200以上の事業所で、ポンプに限らずモーターやファン、クーリングタワーなどさまざまな設置場所でTR-COMは活躍しています。お気軽にお問合せください。

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