2016年2月現在の原稿です
国立大学法人 福井大学は、この4月、新たに国際地域学部を新設し、教育、工学、医学部を併せもつ総合大学です。2015年には、複数学部を有する国立大学において学生の就職率が8年連続1位。学生一人ひとりの能力を最大限に引き出すきめ細かい教育、グローバル社会において世界を舞台に活躍できる力を培う教育、次代を担う高度専門職業人の育成を図っています。

今回はこの福井大学で施設マネジメントのアドバイスをされている財務部施設企画課 特命職員 山口博行様に、エコポンプ導入の経緯についてお伺いしました。
全国の大学初! 全キャンパス管理一体型ESCO事業
福井大学では、2003年に国立大学で初めてのISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)の認証を取得するなど、環境対策にも積極的に取り組んでいます。ところが、
「省エネ機器を使うなど機器単体では省エネに取り組んでいたけれども、エネルギー使用量が他大学に比べ大きかった」一方「大学なので資金がない」

と、機器のみの更新では省エネが十分に進まず、喫緊の課題となっていました。
そこで、“省エネ”と“資金不足”の両方を解決できるESCO事業を検討しました。実は、山口様は文部科学省出身で名古屋大学でもESCO事業に取り組まれたご経験があり、施工会社も顔負けの“省エネのプロ”、ご自身がエンジニアでもあります。ただ、今回は、今までほかの大学でも取り組まれているような一部分だけの見直しではなく、大学の全キャンパスを見直し、既存設備の運営管理も含めた管理一体型ESCO事業を導入。
「全国の大学で初の取組みです」
と山口様。
「既存設備とESCO事業で導入する更新設備を別々で運転管理するよりも、システム全体で見直したほうが、民間のノウハウも活かされ、より効率的に運用できる。さらに、一番多くエネルギーを消費するキャンパスだけではなく、全キャンパスを対象とすることで、大学全体の施設管理のレベルアップにもつながる」

なおかつ
「ESCO事業者によって、省エネ効果は保証され、しかも省エネできた費用で初期導入費用が賄える」
とESCO事業導入を決断されました。三菱UFJリース株式会社、オリックス・ファシリティーズ株式会社および東テク株式会社の3社からなる設備の運転管理も含めた管理一体型ESCO事業で、省エネ・CO2削減に向け大規模プロジェクトをスタートさせました。
インペラカットで性能の適正化
トリシマはエコポンプで空調に関わる未利用エネルギーを有効活用する熱源システムの構築に協力。エコポンプを導入していただいた松岡キャンパスでは、大学病院が併設されていることから、大学全体での省エネのうち実に9割をこの松岡キャンパスで達成しています。目標値は、大学全体でエネルギー削減率18%、年間光熱水費20%削減、松岡キャンパスでは年間光熱水費26%の削減としています。昨年4月にESCO事業は導入され、その目標はこの10カ月間

「ほぼ達成している」
とのことです。
ポンプの選定にあたっては、ポンプを交換することで省エネできることをご存知ない方がほとんどですが、さすが省エネのプロの山口様。
「ポンプで省エネできることは知っていた」
とのこと。ポンプが高効率はもちろんのこと、インペラカットで性能の適正化が図れることを高く評価していただきました。
「インバータ制御も行っているが、その前に、設計と同じ値で、余裕を省いたポンプにした後に、インバータ制御を行うことで、さらに省エネできる」

と“ポンプで省エネ”についてよくご存知でした。
IE3モータとIE4モータ
実は、当初計画では、エコポンプのTUモータ(IE3相当)よりも性能がいいとされているIPMモータ(IE4相当)となっていました。しかし、
「汎用ポンプ+IPMモータより、エコポンプ+TUモータの方が効率がよくなることがわかった」
また、
「納期やコストの面でもエコポンプ+TUモータがベストだったことが導入する決め手となった」
と、トリシマの提案にご満足いただいている様子で、私たちも嬉しいかぎりです。
サステイナブルキャンパスの実現
省エネを達成し、エネルギーコスト削減による利益で、初期投資費用やメンテナンスなどの費用が賄え、資金面もクリア。負のスパイラルから正のスパイラルへと転換でき、持続可能な省エネ、サステイナブルキャンパスを実現することができました。この取り組みは、先進的な省エネ導入モデルとして早くも他大学からの問い合わせや見学があるそうです。
福井大学に採用されたことで、ESCO事業の一助としてもエコポンプが役立つとわかり、活躍の幅が広がりました。今後もESCO事業の普及に私たちも全力でサポートしていきます。

※ ESCO事業…Energy Services Companyの略称で、省エネルギーによる水光熱費の削減をお客様に保証し、削減方策の設計、施工、機器の保守・管理、施工後の効果の検証までのすべてを提供する事業です。また、この事業の費用(メンテナンスコストを含む)はエネルギーコストの削減により得られた利益でまかなうため、お客様は、初期投資費用がゼロで省エネルギー設備を導入できます。
※ IE3モータとIE4モータ…国際電気標準会議(IEC)が定めるモータ効率の基準値で、IE1(標準)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)、IE4(スーパープレミアム効率)があります。日本では、これまでIE1相当のモータが多く採用されてきましたが、2015年のトップランナー規制後、IE3相当のモータの普及が見込まれています。