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酉島製作所 採用特設サイト トリシマポンプ
仕事の幅と視野を広げた3年間のドバイ駐在
井村 洋平
高専 機械工学専攻修了/2006年入社
技術本部 第二ポンプ技術部 高圧ポンプ設計一課
グループリーダー 井村洋平

*職務および原稿は、2020年2月現在のものです。

何度も出し続けた海外勤務願い

あなたは、子どものころ卒業文集に書いた「将来の夢」を覚えているだろうか。スポーツ選手、プログラマー、歌手、警察官、パティシエ、今なら人気はYouTuberあたりか。時代によっても変わってくるだろうが、いずれにせよそれをそのまま叶えている人は幸運かもしれない。

「世界を股にかけるエンジニアになりたい」。

ポンプの設計者として働く井村はその一人だ。子どもの頃から機械が好きで「世界を飛び回っているエンジニア」の友達の父親に憧れ、中学の卒業文集にそう書いた。その後、高専の機械工学専攻まで修了しトリシマに入社。大型ポンプの設計に配属され、入社9年目からの3年間は海外駐在を経験した。帰任後はグループリーダーに昇進、今も数カ月に一度は海外の現場へ飛ぶ。

といっても、最初から順風満帆だったわけではない。入社数年目から海外勤務願いを出し続けたが、声はかからなかった。会社は本格的に海外進出を始めた頃で案件は多かったが、設計の井村は本社でひたすら図面を描き続けた。急な受注拡大に体制が追いつかず、生産も設計も混乱していた時代だ。

「ものすごくしんどかった。でもあの頃の頑張りが今の血となり肉となっていると思います」。

2010年には初めての海外出張で上海へ。世界への第一歩だと思うと胸が躍った。自分なりに仕事をして帰ってきたつもりだったがレポートを提出すると、部長から「何しに行ったんだ!」と一喝された。ポンプ振動の原因調査に行ったのだが肝心なデータが取れておらず、もう一度行かされた。この一件は、「現地調査の難しさと大切さを教えてもらいました」と今でも井村の心に強く残っているが、当時の部長もそのことをよく覚えている。

「基本穏やかな子ですが、あのときはなにくそって顔してましたね。骨のあるやつだと思いました。次は大丈夫だって表情を見たら分かりました。実際、二回目は立派な仕事をして帰ってきましたよ」。

トリシマでは、自ら「海外に出たい」と手を上げる若者は積極的に送り出す。ただ順番やタイミングがあり、技術も意欲もある井村のことは送り出す準備はできていた。いよいよそのときが回ってきたのは、「もう自分は日本で頑張ろう」と気持ちを切り換え、異動願いも出さなくなった2015年。Torishima Service Solutions FZCO、社内ではTSSと呼ばれるアラブ首長国連邦(UAE)のサービス工場への異動が決まった。

調達の苦労、営業の目線、お客様の生の声

TSSは2009年にUAEのドバイに設立したサービス子会社。以来、海外のサービス事業拡大の牽引役として、右肩上りの成長を続けている。スコットランド人のトップのもと、インドネシア人やフィリピン人、エジプト人など多国籍なメンバーは総勢約100名。

まずぶち当たったのが、やはり言葉の壁だった。日本で英会話の勉強はしていたが、上司や同僚の言っていることが分からない。「聞き返しても、まったく同じスピード、同じ言い回しで繰り返されるだけだから、さっぱり分かりませんでした。相手に分かるように喋ろうという視点がないんですよね(笑)」。エンジニアの強みで、絵を描き技術用語を使いなんとかコミュニケーションを取った。

仕事のやり方にも戸惑った。本社にいるときは、ベアリングや圧力計などの購入品は型番を社内のシステムに登録するだけで、あとは発注から受入れまで調達部が管理してくれたが、TSSでは業者探しから相みつ*の調整、値段交渉、納期管理まですべて自分で行った。初めてのことだらけで苦労はしたが、すべては成長につながると信じ、やりがいを感じながら楽しめた。とくに新鮮だったのは、実際にプラントへ行きエンドユーザーと直接やりとりできることだった。

*「相見積もり(あいみつもり)」の略。複数の業者から同じ条件で見積もりを取り寄せ比較検討すること

「海水淡水化プラントに行ったとき、自分が設計したポンプが重要な機器としてちゃんと活躍しているのを見たときは感動しました。なにより、お客様のニーズや考え方をダイレクトに聞けるのがとても勉強になりました。本社にいるときは、営業の要求も正直何いってるんだろうって思ったこともありましたが、いかに自分が自分の仕事しか見ていなかったかを知りました」。

見えていなかったのはそれだけではない。国土の大半を砂漠が占める中東諸国では、雨が降るのは年に数日。夏になると最高気温が45度を超えることもざらだ。現場の人たちはこんな中で働いているのか。海水淡水化プラントの必要性も肌で実感した。

満天の星空の下、砂漠のど真ん中をひた走る

一年が経つ頃には英語にもだいぶん慣れ、休日には現地のサイクリングチームに加わり砂漠の中を走ったり同僚の家に招かれたり、ドバイライフを満喫できるようになっていた。仕事は毎日忙しかったが、終業時間になれば上も含めみんなピタッと退社するので、アフター5も楽しめる。

が、いざというときには真夜中でも動くのが世界の仕事だ。オマーンの海水淡水化プラントへ既設ポンプの取替えに行ったときのことだ。新しいポンプを既設部品と組み合わせる必要があったのだが、その接合部品の寸法が合わず取付かないことが判明した。トラブル自体はさほど深刻なものではなく、部品を削れば解決できる。しかしその現場には、作業環境が整っていなかった。明日には必ずポンプを動かさなければならない。時間は夜の8時。迷っている暇はない。

「すぐにマネージャーに電話して状況を伝えました。今からTSSに部品を持って帰る、加工する人間を二人ほど用意して欲しい、と」。

マネージャーの答えは、YES, Don’t worry! ところが、その日は泊まるつもりでいたのでドライバーはすでに帰していた。肝心の足がない。顧客に状況を話すと、「OK! 俺たちに任せろ!」と一人がドライバー役を買って出てくれた。国境での出入国検査も含めると、片道約5時間。満天の星空の下、砂漠のど真ん中をひた走る。お互い片言の英語で、仕事のことプライベートのこといろんなことを語った。TSSに帰り着いたのが午前2時。工場には明々と電気がともり、「待ってたぞ!」とすぐに作業に入ってくれた。井村たちは仮眠をとり翌朝すぐにオマーンへ。改造した部品を取付け、予定通りポンプを回すことができた。

「お客さんもトリシマもなく、みんなが一つのチームでした。このときにも学びました。小さなエラーがこんなに大きな問題になって跳ね返ってくる。納期を厳守するために現場がどれだけ必死か。机に向かっているだけでは決して得られない貴重な学びでした」。

人も企業も一緒に成長していきたい

TSSはサービス会社なのでメンテナンスが主な業務だ。UAEをはじめ、サウジアラビアやカタールなど、トリシマがポンプを納入している現場へその後も積極的に足を運んだ。既設ポンプの性能を調べ、オーバーホールをすることでどれだけ効率が上がるかをレポートにまとめて顧客に提案。そのまま受注につながった案件も少なくない。「イムラさんのおかげだ!」。最初は英語でのコミュニケーションがたどたどしかった井村が、帰るころには営業からそう肩を叩かれるまでになっていた。

2018年4月に帰任し、一年後にはグループリーダーに昇進。6人の部下を抱え、今はその育成にも意欲を燃やす。

「経験のないことに挑戦するのは大変ですが、やり遂げた後には必ず成長があります。私自身、ドバイの3年間で仕事の幅と視野が広がったように思います。これからは、部下を育てることにも真剣に取り組み、人も企業も一緒に成長していきたいですね」。

部下の一人が、タイのサービス工場へ出向することが決まった。異動願いを出し続け、3年目でつかんだチャンス。かつての自分と重なる。まだ二十代半ばの彼が、どんな成長を遂げて帰ってくるのか楽しみにしている。

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